旅の日記展やってます!
2013年 02月 28日
沖縄県、宮古島。本島北部、やんばる。そこで出会った、人、景色、出来事、貝や植物、森。それをカタチにし、展示する旅の日記展。
宮古島では、宮古上布の織り手さんに会いに行き、糸の原材料になる植物、苧麻の畑に空港からその足で連れて行ってもらい、糸の“績み”方を習い、宮古上布に対する想いや、これからのこと、糸を大事に思う気持ちと、課題など、たくさん教えて下さいました。そして、なんと、その貴重な上布の糸を、展示に貸していただきました。ものすごく細く、丁寧に人の手で績(う)まれています。
本当北部では、“やんばる”の森の中に泊まり、鳥の鳴き声を一日中聞きながら、作業しました。
芭蕉の畑に入り、繊維をとり、福木と琉球藍、染物芋(クール)で染めました。芭蕉の糸も、宮古上布と同じ、畑から、人の手で糸になってゆく、貴重な糸です。
その貴重な糸から、宮古上布や、芭蕉布は生まれる。糸を大事に大事に思いながら、織り手が反物にしてゆく。そのとき、糸の背景には、人の顔が見えます。畑が見えます。そして、何より、心地よい感触、清々しい美しさです。
私は、大学で織物を専攻しました。
卒業制作に、ひとつは木綿の紡績糸を購入し、化学藍や、化学染料で糸を染め、大きなタペストリーを織りました。
もうひとつは、在学中に、大学の芭蕉畑に入るたびに溜めていた繊維を、何日も何日も家にこもってこつこつ繋ぎ、糸に績んだ糸で、天然の琉球藍と染物芋で染めた糸で小さな3枚綴りのタペストリーを織りました。
そこで、私のその後の行く先がはっきりとしたのだと思います。
買ってきた木綿糸は、お金を払うと、機械に運ばれ、やってきました。
私が鎌を握り、畑でとった繊維は、木灰で炊かれ、私の手で糸となりました。
そうすると、その2つの糸は「見ず知らずの縁もゆかりもない初対面の人」と、「小さい頃からよく知っている近所の子」くらい違います。
つまり、愛おしいのです。自分で作った糸は、愛おしい。話しかけたりなんかしたりして…。
今、自分の着ている洋服に、どれだけの背景が見えるでしょう。
綿のTシャツを見て、綿畑が見えますか?
それは、あたりまえに思っていましたが、良く考えると、変なことです。
スーパーの切り身の魚を見て、海で泳いでいる姿を想像できない子供がいる、なんて話題にはなりますが、身の回りのいろーんな物を見渡したとき、どこまで自分がそのモノの背景を知っているのかと思うと、考えさせられます。
今回、モノの源流を手繰り、生活すること、生きるということ、様々なことを感じた旅をしてきました。
それを展示で表現するのはとても難しいことでした。それを、カタチにするのも時間のかかることでしたが、今回の旅でたくさんの方から頂いた気持ちや、力を、来ていただいた方に、少しでも伝われば、と思っています。そして、一昨年94で亡くなった祖母がノートの最後に書いていた言葉が巡ります。
人生とは旅のようなもの
Have a nice trip
よい旅を!
by 83yui | 2013-02-28 01:24 | 展示